「私たちはどこから来たのか? 私たちは何者なのか? 私たちはどこへ行こうとしているのか?」 西欧文明を批判してタヒチに住んだフランスの画家ポール・ゴーギャンのこの問いは、地球規模の大転換に遭遇している私たちにこそふさわしい問いではないでしょうか。
いま、世界中を席巻している新自由主義の政治、地球市場化、そして「緊急事態国家」の支配と戦争の地球化は、一方では、世界の距離を縮め、地球市民を生み出しましたが、他方では、社会的格差を拡大し、経済のみならず文化や生き方や生存の次元でも社会的排除を推し進め、さまざまな人が自由に集う公共空間を消滅させて見えない隔壁に閉じ込め、あらゆる協同性の解体とともに寄る辺なき裸の個人を不安のただ中に置き去りにしています。人々は日々おこる悪と悲惨に心痛めながら、「敵」が名指されれば、不安の苗床に発する攻撃性と暴力性を孕んでナショナリズムの奔流に呑み込まれていきます。
しかし同時に、地球のさまざまな場所で、人間の居場所を立て直そうとする動きもはじまっています。ボランティア、市民活動、NPO、NGOへの関心の高まりは、流れの中で立ち止まろうとする人々の人間回復への潜在的な願望の大きさを映し出しています。
私たちは、ボランティアの魂と社会を洞察する知と実践する力を養い、人間の声に充ちた共生社会を立ち上げるために、1998年に日本ボランティア学会を設立しました。日常の場で紡いだ経験知を、大会やフォーラムや研究会の場に提起して、相互的な学びと討論の中に、社会的排除の機構を解体して「共生」を目指す知に組み替える「判断力」を磨き上げ、その「判断力」を現場に差し戻すことを試みてきました。
この学会は、人間の回復を渇望する人々の聞こえない声に耳を澄まし、「細部に神宿る」まなざしを見失わず、社会的に排除された人々の「存在の現れ」の実践に連係していく、そして「最大多数の最大幸福」という功利主義の原理を横滑りで入れている社会の多数派の考え方に対して、「すべての人間の幸福」(ガンジー、宮澤賢治)というもう一つの視座を見出していく、開かれた場としての学会にしてゆきたいと考えています。
この呼びかけに共鳴されて、日本ボランティア学会に参加していただき、人間回復と多声的な共生社会の構築というささやかな大事業に協働する喜びを共にされることを切に望みます。
2006年2月
日本ボランティア学会代表 栗原 彬