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連載

ケアにアートを取り入れる (4)
認知症高齢者研修所およびデイケア施設:シルヴィアホーム

Bruce DARLING ブルース・ダーリング/九州保健福祉大学

写真 シルヴィアホームの外観  シルヴィアホーム(Silviahemmet)はストックホルムの緑豊かな郊外にある。このホームはもと資産家の邸宅だったが、それが市に寄贈されたのを機に認知症ケアセンターに転用されたものである。シルヴィアという名称が示すように、この研修所はシルヴィア王妃の支援を得て運営されており、主に3つの役割を果たしている。第1に認知症の老人専門のデイケア、第2に認知症者専門の介護者養成教育、そして第3に認知症に関する研究である。王妃自身、アルツハイマーになった母親の介護に献身的につくした。その体験を通じ、王妃は認知症高齢者介護のための教育と研修を同時に可能にする養成機関の必要性を痛感し、1995年シルヴィアホームを設立した。

ここでは研修生のための教科書を独自に作成し、授業と実習を一体化したカリキュラムを編んでいる。その特徴の一つは少数の研修生(1年に6名程度)が一人ひとりの患者さんと一日をともにすることである。この体験から患者さんに対する理解が生まれてくる。教育の中で特に重要なのはアルツハイマー型の認知障害者にどのように肯定的に話しかけ、どのように接するかについて学ぶヴァリデーション研修プログラムである。「ヴァリデーション」は認めるという意味だが、その基本は認知障害のお年寄りに接する時は、真心を込めたアイコンタクトに配慮し、優しい静かな声で話し、スキンシップを大切にし、何事も受け入れる姿勢を貫くことである。

シルヴィアホームは自然環境に恵まれている。周囲には大小の住宅が点在する。シルヴィアホームも元は個人住宅として設計されたものであるから、転用のための改築が必要だった。その際、住宅のもつ家庭的な雰囲気を壊さないように気をつけた。居間、ダイニング、個室はもとの雰囲気をそのまま活かしている。邸宅の時の中央のプールは、明るく開放的な天井付きアトリウムに作り替えた。このアトリウムを共有空間の核として、その周囲に居間、ダイニング、個室が一巡する回遊性のある「口字型」の平面図が出来上がった。玄関を入って右手には暖炉のある大きな居間とその奥にいくつかの個室。玄関を入って左手回りには上品なダイニングルーム、その奥に台所、そして美術室、個室とつづく。アトリウムにそって右に回っても、左に回っても、集会室に出る。この集会室は増築部分で研修や講演会などの教育活動に使われている。

写真 シルヴィアホーム室内

間取りの中央を占めるアトリウムには、テラコッタ色のタイルの床をいれ、壁を立ち上げ、天井のすぐ下に高窓を一巡させた。高窓からは自然光が入る。高窓を見上げると空や雲の動き、そして樹木のざわめきが見える。デイケアにくる認知症高齢者はこのアトリウムで食事をしたり、ゲームをしたり、創作をしたりする。諸々の活動の一面を示すかのようにピアノがあり、大きなぬいぐるみがあった。家具は安定のよい木製のテーブルと椅子。中央のアトリウムと周囲の部屋はガラス扉で通じている。介護者はどの部屋にいても、ガラス扉越しに、中央のアトリウムの様子を見ることができる。アルツハイマーの患者には徘徊僻のある者がいるから、この部屋の配置はとても便利だそうだ。

改築にあたって配慮された点の一つにトイレと異臭対策がある。認知症者が排泄の阻喪をしても清掃が簡単にできるようにすること、また臭いがつかないようにすること、しかも認知症者の尊厳は保つこと、である。トイレはシャワーとセットにして一人用のものを数カ所設置してあるから、認知症者は他の人に見られることなく身体を簡単に洗う(あるいは洗ってもらう)ことができる。またアトリウムの床はタイルで掃除が簡単である。家具は布張りではなく、木製に簡単に取りはずしのできるカバー付きクッションを用いている。

筆者は残念ながら、痴呆の高齢者がじっさいに芸術活動を行っているところを見学できなかった。しかし、台所の隣の部屋には画材が揃っていた。またフィンガーペイントの作例を一つ見せてもらったが、それは力強い、色彩の美しい絵であった。そしてここでは音楽も楽しむ。庭仕事もする。また広い台所では、介護者と認知症高齢者が一緒にお菓子を焼いたりすることができるようになっている。これは本当の活動であって模擬的なものではない。

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