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進藤由美/コロンビア大学大学院公共政策NPOマネジメント専攻
皆さんこんにちは! 日本も暑さが厳しいようですね。ニューヨークの気温は毎日だいたい東京と同じぐらいですが、湿度が低いので東京よりも非常に過ごしやすいです。とはいっても、すでに渡米5年。ニューヨークの暑さに慣れてしまったので、暑いものは暑いです…。
さて、6月号でお話が途中となってしまったアメリカの健康保険の件ですが、今回はメディケイド(低所得者用医療保険)についてご紹介します。メディケイドはもともと、未婚のまま子供を産んだり、離婚をした若い母親とその子供達への救済プログラムとして始まりました。その後、母子家庭だけでなく、低所得者全員をカバーするための保険として確立され、現在では母子家庭のほか、障害者や高齢者、失業者などが受給の対象となっています。
メディケイドの素晴らしいところは、一度受給の対象となると、ほとんどの医療費がメディケイドによってカバーされる、という点です。私がボランティアで病院への付き添いをしていたIさんは、2001年に病院に長期入院しているときに医療費で破産してしまったため(アメリカでは珍しい話ではありません)、メディケイドの受給者となりました。彼女は糖尿病を患っていたのですが、病院での診察費や処置費だけでなく、薬代やタクシー代までが支給されていました(注:タクシー会社は指定されます)。ちなみにここマンハッタンは網の目のように地下鉄やらバスが通っていますが、それでも「医療を受ける人」は公共交通機関を利用するのが大変なはず、ということで、タクシー代が支給されるのです。また、Iさんはある日「最近目が良く見えない」と病院で訴えました。するとその日のうちに視力回復のレザー治療が施されました。もちろんIさんは一銭も(一ドルも、ですね)払っていません。
「うらやましい」と思った方、いらっしゃいませんか? 実は私も付き添いをしながらそう思ったんです。タクシーで送り迎えがあり、しかも視力回復のレーザー治療が無料なんですよ? もし私がレーザー治療を受けようと思ったら、片目だけで1000ドル、約12万円かかります。それがメディケイド受給者は無料で受けられるんです。素晴らしいと思いませんか? しかしよく考えてみてください。このメディケイド、政府がお金を負担しています。ということは、もとは市民の税金なんです。Iさんにとっては無料のレーザー治療やタクシーも、もとを正せば市民の税金。こういう使い道は正しいのでしょうか?
アメリカの、とある保険会社の広告にこんな言葉がありました。「Welcome to Middle Class Poverty」中産階級貧困組にようこそ! というところでしょうか。近年、アメリカではミドルクラスと呼ばれる中産階級の人たちの間で、医療保険を持っていない人が増加しています。医療保険費が毎年うなぎのぼりにあがっていくために、解約する人が多いからです。また最近では雇用者が医療保険をカバーしなくなってきています。そのためミドルクラスの人たちは、お給料は人並みにもらっていても、医療保険を持っていないため、万が一のことがおこったら、それこそ全財産をなげうって病院に入院しなければなりません。6月号を覚えていらっしゃいますか? 私はたった3時間、救急病院のベットで寝ていただけで、約9万5千円の請求が来ました。盲腸などで入院したら、あっという間に100万、200万円のお金がとんでいくのです。
ちなみにこれは高齢者医療でも同じことです。前回お話したように、メディケア(高齢者用医療保険)は急性期の病気だけをカバーする保険のため、長期にわたる医療・介護は、自分でお金を払わなくてはなりません。お金を使い切って破産、という事態にならなければ、メディケイドは支給されないのです。
メディケイドの支給をもうちょっとだけ厳しくして(適用範囲を定めて)、その分を一般市民に平等に分け与えることはできないものなのでしょうか? 実際日本は国民皆保険を通じてそれをやっています。同じようなシステムをアメリカになぜ導入できないのだろう? といつも疑問に思います。アメリカに国民皆保険や介護保険制度が整っていたら、もうちょっと在米日本人高齢者の皆さんも楽に老後を過ごせると思うのですが…。
そういえば私の医療保険も7月で期限が切れている……。
(次号は「NYに住む日本人高齢者の悩み」です)
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